2018-01-01から1年間の記事一覧

「誰かが何かに抱く愛おしい想い」が愛おしい 『ネオカル日和』辻村深月

作者と作品は切り離して考える、という考え方がある。切り離して考えるのであれば、作者のことはなるべく知らないほうがいい。そう思って、頭の固い私は長いこと「小説家のエッセイ」を読まずにいた。 だが、加藤シゲアキという「最初からその人となりをある…

特別じゃないわたしと、特別じゃない食事を 『わたしたちは銀のフォークと薬を手にして』島本理生

ピース又吉直樹さん、NEWS加藤シゲアキさんの番組「タイプライターズ」へのゲスト出演をきっかけに、島本理生さんの本を読み始めた。まだ3冊しか読めていないけれど、すごくいいなと思ったので感想を書いておこうと思う。 わたしたちは銀のフォークと薬を手…

あなたの傷はどこですか 『不在』彩瀬まる

なるべく同じ作家の作品が被らないように書くつもりだったのに、今ほかに書くことがないのとこの本があまりに良すぎたために書かずにはいられなかった。 短編が多い彩瀬まるさん作品のなかでは久しぶりの長編。だからといって間延びしているということはなく…

グロテスクで美しい愛 『くちなし』彩瀬まる

『くちなし』は幻想的な短編が多く収められている。体の一部を外して誰かに渡すことができたり、人間(主に女性)が怪物に変身してしまったりする。どれも「愛」についての物語だ。 愛ってきっと、きれいなだけではない。確かにきれいかもしれないけれど、それ…

あなたと幸せになりたいのです 『くたばれ地下アイドル』

ファンってなんなんだろう、と最近よく考える。 すごく勝手な存在だと思う。自分がファンであるということについて考えても、どうしたって自分勝手だとしか思えない。勝手に夢を見て、勝手に想像して、勝手に気持ちを推しはかって、勝手に理想を押し付けて。…

「そうじゃない」人のための物語 『もういちど生まれる』

自分には、何かしらの能力が秘められていると思っていた。今はまだ開花しておらず、いつかそのときが来るのだと。 漠然と、しかしどこか確信めいた気持ちでそう思いながら人生を歩んできた。そう思っていられた最後の時期が、大学生として過ごした4年間だっ…

ちょっと怖いものは美しい、危ういものは可愛らしい 『不時着する流星たち』

話題になった時期に『博士の愛した数式』を読んで以来の小川洋子作品。当時の私は壮大なスケールと疾走するスピード感を読書に求めていたので、『博士の愛した数式』の良さも理解するには至らなかった。今回、小川洋子さんの短編集『不時着する流星たち』を…

女の子は、弱くて脆くて強くてかわいい 『王妃の帰還』

女の子たちの物語が好きだ。 揺れ動く心を自分では制御しきれない思春期の、どうしようもない衝動。ある人はその衝動をかわいくなることにぶつける。ある人は恋にぶつける。ある人は友情にぶつける。ある人は好きなマンガやアニメについて考えることにぶつけ…

夢を追う人たちはこんなにも眩しい 『ハケンアニメ!』

辻村深月さんの作品が、すごく好きだ。 思春期のこどもたちの揺れ動く心を描くのも、大人になりきれない大人を描くのも、どっちも。特に好きなのは『スロウハイツの神様』。何者かになろうとして頑張っているクリエイターの卵たちの、あるいは既にクリエイタ…

戦うきみと、向き合うあなたに 『青の数学』

その月に読んだ一冊をピックアップして長めの感想を書けたらいいなと思って、手始めに2月に読んだ本の中で一番気持ちが盛り上がった本について書きます。 『青の数学』王城夕紀 青の数学 (新潮文庫nex) 作者: 王城夕紀 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2016…

はじめに

突然ですが、読んだ本を記録していこうと思います。なにせ、わすれてしまうので。 簡易的な記録には「読書メーター」を用いています。読書メーターの記録欄には読んだ直後に思ったことを書き留める程度なので、もっと長く書きたいことについてはこちらに書い…